小森宗太郎先生
 1955年、国立音大教育科の学生になったわたしはそれまで本でしか知らなかった先生方にお目にかかり教えて頂く事となった。音楽史と美学の村田武雄先生、楽式論の属 啓成先生ほかおおぜいの先生方に・・・
 
 N響のティムパニ奏者として有名だった打楽器の小森宗太郎先生は[器楽指導法]という授業だった。初日にいきなり
「強拍と弱拍はどっちが強いか?」
といわれた。1年生になりたての答えは決まっている。
「強拍デース!」
その瞬間、先生は頭のてっぺんまで真っ赤になった(今の僕とそっくりの頭・・)
「だからお前達の音楽はノッペラボー!!」
「4拍目のあとに大きなエネルギーを貯えるからこそ次の1拍目がドーンとくるんだ」
「寄せてくる波を見たまえ、こうグーッと盛り上がってザブン、となる」
「強拍は結果であってその前の蓄積に思いを致したまえっ!」と立続けのご立腹。
次の週から夏休みまでの3ヶ月、毎週毎週グルグルと教室の中を行進させられた。「オイッチニ、サンシッ」の号令にあわせて・・・
シッ、のところで膝を高く挙げ次のオイッチのところで床をドン、と踏みしめる、何百・何千歩と歩いた。今、指揮をしていてもあの時の号令が耳の底に聞こえてくる。
 
 僕が教師になってオーケストラのトレーニングを担当するようになってからも小森先生はいろいろご指導下さった。ティムパニだけでなく大太鼓や小太鼓もきちんとチューニングする事、トライアングルはいくつも用意して曲調に合った音色の物を決めることをはじめとして・・・
 先生がティムパニをチューニングなさるとオーケストラ全体がいい音になった。コントラバスやチューバやファゴットをはじめ全ての楽器の音程が安定した。たまに会場練習の時などに小森先生が学生に代わってドン、と叩くとオーケストラ全体が数段上手くなったように鳴り響いたものだ。
 大学オーケストラは17年間担当したがその間数えきれない沢山のオーケストラ術を僕は宗太郎先生から教えて頂いた。

 ところで、先生のご長男は作曲家の小森昭宏さん、ご次男は慈恵医大理事の亮さん、ご縁でおふたりに今親しくして頂いている。そのことはまたの機会に。

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