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Jin's Diary&Essey

  #920
頼りになるコーラス
Date: 2017/05/23(Tue) 
 横着なソプラノソリストのことばかり書いて、合唱団の人達が溜飲を下げたり慢心したりすると困るので別のエピソードをご紹介しておこう。

 1970年の始め頃、僕はベルリンに居た。少し後輩で、学生時代一緒に演奏旅行にも行った事が有るソプラノの M.M 女史が、ここのホッホシューレ( 高等音楽院 ) に学んでいることを着いてから思い出して電話してみた。
 
 「岡本です」「あーら何処から掛けているの」「きのうヒルトンホテルに入ったんだ」「久しぶりね,食事でも…」約束の日の朝、M.M から電話が有った「急な仕事が入って隣の国迄行かなくてはならなくなったの」「どうしたの ? 」「マダム・バタフライの主役が倒れて代役に抜擢されたの」「素晴らしい ! 暗譜出来ているの ? 」「学生時代からずっと勉強していたから大体覚えているわ」彼女は国立音大で伊藤京子門下の逸材だった。

 それから一週間経って電話があった「お帰りなさい、どうだった ? 」「いろいろ話したい事も有るから会いません ? 」「いいね」ということで夕食を共にした。彼女はご飯そっちのけで代役が成功した話をずっとしてくれた。
 
 「まず指揮者と演出家に会ったの、経験は ? と聞かれたので少し大胆だったけれど,日本で何回か…と、そして直ぐに衣装付けてゲネプロ、伊藤先生の蝶々さんを必死で思い出して歌い・動いたわ」「たいしたもんだ」「一幕終って合唱団のリーダーが私に声かけて、私たちがフォローするからもっと自由に演じるといいよ、と言ってくれた。そのあともずっとコーラスがワザとらしく無く私の周りで歌ってくれて,中には次のアリアのイタリア語まで呟いてくれるの」「まるで動くプロンプターだな,日本のオペラのコーラスは学生の寄せ集めが多くてろくに歌えない,動けない…で足引っ張られるのに」( 現在はもう少し向上した筈 ) 「こちらのオペラは主役クラスは新人がデビューすることがあってもコーラスはなん10年も経験しているベテランばかりなのよ」

 日本との根本的な違いに僕はただただ羨ましく思い,尊敬するばかりだった。あと100年もしたら我が国のオペラもヨーロッパのようになるのかなァ などと思いながら・・・