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Jin's Diary&Essey

  #866
おや、お久しぶり !
Date: 2016/05/17(Tue) 
 日本橋の三越の前あたりから、中央道りを銀座8丁目迄歩く機会があった。

三越の真ん前には新しい商業ビルが何本か建ち、いろんなテナントが入って賑わっていた。例によって食べ物屋が多いが、その昔一軒家で立ち並んでいた鰹節屋だの刃物屋もその中に入り混じって結構見る所が在って楽しい。もともとの「江戸っ子」は苦々しく思っていると聞くが建物が古くなり新しく構築するとなれば高層になることは当節致し方が無いとも思う。

 表道りから一本裏に入れば、昔からの鰻屋・蕎麦屋・天婦羅屋なども健在で、ちょうど昼どきとあってどの店の前にもサラリーマンが大勢行列していた。これらの店には顔見知りの親父さんやおかみさんが居て「おや、お久しぶり…」とか「だいぶいい陽気になりましたね…」などと言葉を交わすのだろうが、ビルの中のレストランでは恐らくアルバイトのおねえさんばかりでこんな無駄口は一切なく誰も彼も寸分違わないマニュアル語・・・「何人様ですか ? ご注文伺います、ご注文を繰り返します、以上でよろしかったでしょうか ? 」を言うだけだから味気ない。

 「よろしいでしょうか ? 」という言葉が「よろしかったでしょうか ? 」に変わったのはいつの頃なのか定かでないが、僕の不確かな記憶によれば、高速道路が出来てサービスインがその中に出来て、そこの従業員が「何人様ですか ? ご注文伺います、ご注文を繰り返します、以上でよろしかったでしょうか ? 」というのにとても違和感を覚えたのを記憶している。道路沿いのこれらのレストランは、通りがかりのいわゆる「イチゲン」の客だから「おや、お久しぶり…」とか「だいぶいい陽気になりましたね…」などと言う必要も無く短時間に大勢をこなして儲ければ良い、食べ物はどこかにある工場で大量に一括生産して冷凍して配布すれば良い…などという嘆かわしいシステムの上に成立しているのだから昔からの鰻屋・蕎麦屋・天婦羅屋などとはまったくお客の扱いも違って当たり前となってしまったのだろう。

 日本橋から京橋を通り「明治屋」を覗き、八重洲あたりでは高校生の頃から絵を観たりレコードコンサートに散々通ったブリヂストンビルが無くなっているのに魂消たりし、銀座2丁目の喫茶店で一休みしながら1時間の散歩は、都会の変化に伴って起こる否応無しの「まち」の変化に思いを巡らす "良いそぞろあるき" となったのだった。