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Jin's Diary&Essey

  #840
ご用聞きと配達と
Date: 2015/10/31(Sat) 
 子どもの頃、毎朝「ッちわー、八百屋でーす」「肉やでーす」などとご用聞きが必ず来た。夕方になると「っちわー・・・」と
朝に注文した物を届けて来る。幼稚園にも行かないで家で遊んでいた僕は、朝晩現れるご用聞きのおじさんと顔見知りになって、ひとことふたことお喋りするのが楽しかった。

 一昔前 " 文化講演会 " を依頼され近県に行った。主催者の一人 Z 氏は学生時代からの友人で百貨店の社長になって居り、その地方の文化的リーダーのような役割を果たすようになっていた。講演が終わって昼食を頂きながら彼と彼の仲間達と昨今の世の中の変わり様の激しさの話しになった。ご多分に漏れず「デパートの客離れ」についての悩みが口々に披露された。

 「これは門外漢の音楽家の直感ですが…」と断った上で「また、昔のようなご用聞きと配達の時代になりますね」と、その頃感じていた率直な考えを言ってみた。その場に居た小売業のベテラン達は一様に顔を見合わせ " こいつなんと見当はずれな…"と云うような顔を一斉にした事がとても印象的だった。

 それから30年が過ぎた。僕は今一人暮らしで我が侭に気楽に日常を送っている。毎日の買い物は「ネットショッピング」に任せ、その日の夕方か翌日には野菜や肉や新鮮な魚や、はたまた風邪薬迄「ッちわー・・でーす ! 」と注文した品物が届く。ご用聞きがパソコンのキーボードに変わり「配達」が昔の自転車から軽トラックに変わっただけ。重宝している。

 惜しいな ! と感じている事は、配達して来るおじさん ( 時にはお姉さん ) がお店の経営者であるように振る舞わない事、ご用聞きのときは「フェイス to フェイス」だったから、お客とのコミュニケーションが十分に行き渡った。ネットショッピングの場合は注文の際にキーボードが働いているので客の顔や声が確かめられない。せめて配達した時に注文主の顔や好みや癖を読み取ってしまう才覚が必要になる。そこのところにスーパーが気づけば「ネットショッピング」はもっともっと発達するに違いない。