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Jin's Diary&Essey

  #836
神田の古書街で
Date: 2015/10/13(Tue) 
 ひさしぶりにぐるっとひと回りし、最後にいつもの音楽専門「古賀書店」に立ち寄った。ここは音大の学生時代から60年もの間通った馴染みの店で、店主も3代目になると思う。2時間程かけて壁際と中央の天井から床迄4つの棚を丹念に見るけれども前回来たときとあまり代わり映えしない。それでも数点を選び出し、ついでに表のワゴンに見つけた僕の本(世の中をひと回りして来た ! )も買って若主人にひと声かけた。

「昔のように掘り出し物が無いね、最近物故音楽家がいないのかな ? (音楽家が亡くなるとその蔵書が家人によって売り払われ、それがやがて古書店の店頭に現れたもの ) 」

 などと話しかけると、古賀書店のオヤジ曰く
 「此の頃の先生方はご自分の蔵書が少ないのです。」
 「え? なぜなの」
 「大学の先生は研究に必要な資料は図書館に購入を依頼しそれを自分の研究室で使うので死んだ後に蔵書は残らないのです。」
「 ? ? ? 」

 そう言えば僕も大学の教師をしていたころ同僚たちは毎月のように「 図書購入の申請書 」を書いていた。ところが僕の資料の大部分は「 楽譜 」だから自分のものとして手に入れ自由に書き込みなどもする必要があるから、ただの一冊たりとも図書館に買ってもらう事は無かった。お蔭で引っ越しのたびに膨大な数になる楽譜の段ボールに悩まされ、いまだに楽譜に埋もれたような部屋で仕事している。これらには他人では想像もつかない程の資金を投入して来たが、処分したところで元が取れる物でなく書き込みだらけで他人には疎まれるにちがいない。

 このことが誇りなのか、はたまた無理しないで図書館に買ってもらえば良かったのか分からないが、神田の本屋のオヤジの言うように「此の頃の先生方はご自分の蔵書と云う物が少ないのです。」とだけは言われる事は有るまい・・・と負け惜しみ。