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Jin's Diary&Essey

  #833
夢のような・・・
Date: 2015/09/23(Wed) 
 音大に勤務していた終り頃、30年以上前だった。
 大学の将来について語り合い提言するための会議が有ってオーケストラを担当していた小生にも列席と意見を求められた。
 受験する生徒が少しずつ減る傾向に有りいかにしたら往時の受験率(と言っても数倍程度)が取り戻せるだろうか、と深刻な意見がぱらぱらとあって、それに対して試験問題の難易度を下げたらどうか ! などという的外れの意見なども有って呆れてしまった。
 ずっと黙っていたら学長(音楽のずぶの素人)が「岡本君、何か意見は ? 」などと振って来たので仕方なく次のように答えた。
「少子高齢化の時代が直ぐにやって来ます、高校生を追いかける事よりも、これからは社会人が学びたくなる時代がやってくる筈です、夜6時から10時くらい迄の社会人クラスを開いたらきっと入学する人が居る事でしょう」

 会議室は僕の発言に笑い声で一杯になった。学長と理事長が異口同音に「そんなことしたら名門の名がすたる,そんな夢のような事を言っていないでもっと真面目な提案をしろ」・・・僕の発言は根拠の無いものではなかった。NYの友人が務めるジュリアードを訪ねた時、作曲の研究室に年の頃60位の恰幅の良い男性が居たので敬語を沢山使いながら話しかけてみた。
 「どんな内容を学生に教えていらっしゃるのですか ? 」
 その紳士は笑って答えた「ついこのあいだ入学したのです、いままで30年程,父親の製薬会社を継いで社長していたのですがようやくリタイア出来たので永年夢に描いていた作曲の勉強に・・・」ガッチリと握手を交わした事は言うまでもない。アメリカは日本のずっと先を歩んでいた。

 ここから先はお・ま・け

 やはり30年前、みすずかる信濃の里に音楽の仕事で伺った。朝早くホールに入る為に車を降りると四方を山に囲まれごみごみした都会から行った者にとっては身も心も洗われるような感激だった。思わず脇に居た地元主催放送局のディレクターに風光明媚なる事を誉め、最後にひと言添えた。
 「これで、辺り一面に張り巡らされた電線と電柱が無くなったら日本一の景観ですね ! 」ディレクターが言った。
 「岡本さんは夢みたいなことを言ってお幸せですね」。このあとこのディレクターとは余り仕事しないようにした。
終りに
 週に何日か行きつけの歯医者に行く、大きな道路に面した所だが最近やけにすっきりして空が明るくなった。
 気がつくと、このあたり数百メートルの電線と電柱が地下に埋められていた。「都会でもこんな時代なのだよ」とあの信濃のディレクターに言ってやりたい気持・・・