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Jin's Diary&Essey

  #776
オーケストラの貸し譜
Date: 2014/11/04(Tue) 
最近は随分減ったが、50年前は著作権の関係もあって出版はされずに貸しスコアというものが少なからず在った。
ヴィバルディのグローリアなどもコーラス譜はリコルディから出ていたがオーケストラのスコアとパート譜は「貸し譜」となっていて日本窓口のヤマハに演奏の都度安くない借用料を払って使っていた。ずる賢い人が居て「コピーしてしまえばいいのに…」などと云う事もあったけれど、僕としては法律を犯して演奏する気には到底慣れなかった。

しかし、貸し譜にもいろいろ利点もあった。それは楽譜に嘗て使った指揮者の筆跡と思われる書き込みが沢山消されずに残っていた事、リピートの記号が消されていたりすると「ははぁん、繰り返さないでストレートでやったな ! 」とか、イタリー語ドイツ語英語の書き込みがあちこちにあったりすると色々な人の考えが分かって駆け出しの僕にとってはおおいに参考になった。

もう一つ、海外のオーケストラのコンサートで勉強した時のこと。
一番多く通った町はロンドン、テームズ川沿いのロイアルフェスティバルホールには数10回も通った。殆どの場合座る場所はオーケストラの背面にあるコーラス席の一番前、つまり指揮者を正面から10メートルの近さに見える所、なによりのレッスンであった事は当然だがもうひとつ誰にも教えたくないメリットがこの座席にはあった。

それは、オーケストラの後ろのほう(つまり僕の直ぐ目の前)のトロンボーン、チューバ、ホルンそれにティンパニをはじめとする打楽器の連中の楽譜がよく見える事。つまり書き込みが全部読めてしまう事だった。
上述のスコアを借りた時と同様、カットや追加や速度の変化についての指揮者の注文ほかあらゆる書き込みをすべて読むことができた。その事がどれほど役に立っているか分からない。

しろうとにとってみれば、オーケストラはスコアとパート譜があって、演奏者は譜面に書かれたとうりをキチンとやっているものと思い込んでいらっしゃる事だろうが、実際には指揮者は譜面を丹念に読み込み、時には書き違いがあれば発見し、不足があれば書き込み、オーケストラメンバーの質問があればつぶさに検討し…といろいろな書き込みを行い演奏者も同様に大切な所をマークしたり、ここだけは絶対に指揮者を凝視すべきところあれば★や目玉印を付けたり実に様々な書き込みのオンパレードである。

真似をする必要は無いけれども合唱関係者はこの何分の一でも見倣ってもらったら状況は変わるだろう。