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Jin's Diary&Essey

  #741
表情「結び」
Date: 2014/05/19(Mon) 
若手歌手が早朝のBSプレミアチャンネルでオペラのアリアを歌っている.スタジオで制作されたものらしく簡単な装置の前で大仰な仕草で歌う様子はさながらオペラコンサートのようだ.日本の若手はここ何年かの間にほんとに良い声になった.

観ているうちに何となく違和感を覚えてしまった.なんともバタ臭過ぎる !!

彼女達が自ら工夫したものか,それとも先生から指導されたものか,あるいは飽きる程繰り返し観たDVDのシーンがそっくり移ってしまったのか,

音楽大学で教えていた頃のことを思い起こすと「先生が広いホールの客席から,表情,歩き方,お辞儀の仕方,視線の配り方に至る迄立ち居振る舞い全体を指導する場面」などはただの一度も見聞きしたことなど無かった.あるいはドイツから指揮者を招いてオペラを学んだとき,会場練習の最終段階でアンコール出入りのタイミングなどの練習で,役柄に従った歩き方やお辞儀など,こまごまと指導するのを見て「こんな無駄な時間があるのだったらもっとオペラを練習したら・・・」と発言する能天気な教授達がほとんどだった.つまり,「教える」と言う中身には,発声・外国語の発音・音程やニュアンス等々の指導のみが存在していて「歌う様子がどうであるか」についてはまったく触れない.芝居(演劇)に置き換えると演出家不在なのである.台詞の読み方ばかりに偏った指導で映画や芝居が仕上がる筈など無くホールを使ってステージで演じる俳優を客席から眺めて仕上げて行く段階がスッポリと欠落しているのが日本の音楽家指導なのだ.

したがって,ここを卒業して演奏家や指導者(教育者)になったとき「発声・外国語の発音・音程やニュアンス等々の指導だけ」が演奏家や指導者の役割だと心得る人が余りにも多いのだろう.

かくて,目を閉じて聞いていればとても上手な演奏も,いざ目の当たりにするとギクシャクとした光景,すなわち妙に揃った顔つきで歌う一団(学校の児童生徒のコーラスに多い)や,プロの歌い手にしてもDVDそっくりのイミテーションがそこにはあって見聞きする人達の共感が得られにくい・・なんともチグハグな演奏風景が出現する.

さしあたって指導者に臨むこと・・演劇や映画の制作現場を観て指導者は演ずるものをいかにして育て上げて行くのかをジックリと考えてもらいたい.