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Jin's Diary&Essey

  #740
表情「2」
Date: 2014/05/15(Thu) 
前回の続きをすぐに書くつもりだったが遅くなってしまった.理由が2つある.

一つ目は「公共放送主催」の合唱コンクール課題曲練習が今年も始まったこと.
日本中の善良な少年少女達が指導者の先生と一緒にこれの録画を観て寸分違わぬ所迄真似して予選,本選に臨む ! ? !

昔,このコンクールの審査員を委嘱されたが,次から次と登場する小中学生が皆同じ並び方歌い方さらに「歌うときの表情」迄そっくりなのに驚いた.何10校かに一つ,その学校なりの工夫をした表現や並び方や表情をみてホッとして僕が評価するとそれは他の審査員とは全く違う採点であることに戸惑った.

審査員室でそのことに触れると,ある委員が「あの学校は模範演奏を観ていないのかしら」あるいは別の一人が「楽譜も指示と違う所でクレッシェンドしたりしていて自己流が過ぎる」他の先生方が口を揃えて「そうだ,そうだ !! 」どうやら僕一人が変わり者になったような雰囲気が漂う.僕が口ごもりながら「皆が一緒になることがおかしい,それぞれがベストを尽くして競わなければ・・・」と言いかけると主催者のお偉いさんが「岡本さん! そんなことしていると水準が下がりますよ! 」僕はこの時思った.       
     この国の音楽文化のレベルはこのようにして決まって行くのだろう・・・

もうひとつの理由,2012年に何回目かの来日をしたあのスウェーデンの放送合唱団のコンサート風景の放映が早朝あったこと.
半世紀以上の歴史を持つコーラスで1970年頃,ストックホルム迄聞きに行ったことがある.50人程の混声合唱,ひとりひとりが立派なソリストであり皆で歌えばデリケートなハーモニーやニュアンスがそこはかとなく漂う世界一ではないかと思う見事さだ.もちろん指揮者に指示されて「わざとらしく微笑んだり」することなど決して無く,まるでオペラがそこで演じられているようにさえ見える自然な佇まい.

#739で問いかけた日本の演奏の仕上げ方に根本的な誤謬か存在すると思う.楽譜を読み込むより以前にCDやDVDを暗記する程見聞きして後,練習に臨むような風潮が危険に思える,相当高名な演奏家に演奏を依頼した時すぐさま「音源は ? 」と問われる度に寒い思いをする自分のほうがいまや世間離れしてしまった(ひと時代昔の指揮者になってしまった)かのようなむずむずする思いが沸き上がってくる・・・・


(次回・結び)