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Jin's Diary&Essey

  #686
プロらしい仕事
Date: 2013/04/10(Wed) 
「出藍の・・・」と言ったら本人は恐縮していたが、頼もしき後輩高牧康君が「また新しい本を書きました…」と言って120ページ程の本を呉れた。2008年12月に「裏声のエロス」と云う本を書いて話題になった事は記憶に新しい。「・・裏」どころか正面から人の声と立ち向かって「歌う歓び」達成に欠かすことの出来ない「楽しみながら声を出す」ことについてのガイドを独特の角度で切り取って提出した"いい本"だった。

今度の本は「(たった5分の裏声トレーニングで)歌が突然うまくなる」と云うタイトルの見開き2ページで完結する読み易いガイドブックのスタイル。彼の持論である所の「裏声」を中核に据えて4つのチャプターにそれぞれ10前後の見出しを設けてシロートさんをアッと言う間に引きつけてしまうテクニックは見事なものだ。

我が国のクラシック音楽の専門家というものは総じて研究と模倣ばかりに年月を費やし、己がプロフェッショナルとして巷の愛好家を悦ばせる境地になぜか至らず、ひたすら欧米の大家の轍を迷いつつ辿り続けるばかりでなんだか「音楽とはこんなに辛く苦しいものですよ」と案内するような結果になってしまっているのは惜しい。
音楽大学で「良いアマチュアが育てられるような指導者を目指す…」などと口走ろうものならその時点でプロ落第という烙印を押されかねない。

そこのところがなんだかスポーツの世界そっくりで「職業スポーツマン」を目指すよりも自分がオリンピックに出て勝ちたい…という望みだけが強く頭の中にあって、自分の為に精進する所は十分だとしても「スポーツで人の子を導き育む」視点を大きく欠く所が目立つ。その結果、昨今話題のしごきが嵩じて体罰を生ぜしめるような事にもなる。己の専門分野で愛好者を導き育むことを手放してしまったのでは本人がいつまで経っても愛好者の域を超えられない(つまりプロになれない)。

「・・の誉れ」と讃嘆するのは早いかも知れないが上述の高牧君はホンモノの声楽家として道を見極め、歩み続ける所に優れた点がある事を私は確認している。